こんにちは、はずけいです。
PMOとして2年間、さまざまなプロジェクトに携わってきました。
その中で強く感じているのが、課題管理の重要性です。
どんなプロジェクトであっても、課題管理は最重要事項の一つです。課題がきちんと把握され、担当者や期限が決まり、日々状況が更新されているか。これがきちんと回っているかどうかが、プロジェクトがうまく進むかどうかの鍵と言っても過言ではありません。
だからこそ、PMOにとって課題管理の棚卸しは最重要タスクの一つだと考えています。
一方で、プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、課題管理は難しくなります。
課題は次々と増えていき、気がつけば課題管理表が何十件、何百件という状態になることもあります。そうなると、課題管理表を開くこと自体が億劫になり、「結局、今どうなっているの?」という課題が増えていきます。
私自身も、PMOとして仕事をする中で、課題管理について試行錯誤してきました。
この記事では、そんな私の経験をもとに、実際にどのように課題を管理しているのか、そして課題管理をうまく回すために何が重要なのかをまとめました。
現在プロジェクトで課題管理を担当している方や、課題管理表を作ってはいるものの、うまく運用できていない方の参考になればと思います。
Part 1|具体的な課題管理のやり方
1.課題管理表を作る
まずは、課題管理票を作ります。理由は後述しますが、私のおすすめはスプレッドシートです。
課題管理票の項目
課題管理表には、たくさんの情報を入れたくなります。
しかし、項目を増やせば増やすほど、課題を登録・更新する人の負担も増えていきます。
私が使っている項目は、次のようなものです。
- No
- 分類(ToDo/課題)
- タイトル
- 課題内容
- 完了条件
- 回答・状況
- 起票者
- 起票日
- 担当者
- ステータス(未対応、対応中、対応済、完了)
- 完了期限
- 関連資料
課題とToDoを同じ表で管理する
私は、ToDoと課題を別々に管理するのではなく、同じ課題管理表に入れています。
分類という項目を作り、「ToDo」「課題」を区別します。
「これは課題として登録するほどではないかな」と悩むような小さなものも、基本的には登録します。
課題が増えすぎることを恐れて登録を抑制するより、必要なものを登録して、きちんと管理することの方が重要だからです。
担当者と期限は起票時に決める
課題を登録するときは、担当者と完了期限を必ず設定します。
「とりあえず登録して、担当者は後で決めよう」とすると、そのまま放置されることがあります。
また、期限は「余裕を持たせた仮の期限」ではなく、基本的には本当に守るべき期限を設定します。
完了条件を決める
課題を登録するときに、**「何ができたら完了なのか」**を決めておきます。
例えば「仕様を決める」という課題なら、「担当者間で合意すれば完了」なのか、「会議で承認されれば完了」なのかを明確にします。
これだけ決めておけば、**「終わったつもりなのに、実は終わっていない」**という状況を防ぎやすくなります。
条件付き書式の設定
条件に応じて、セルの色が変わるように設定します。地味ですが、状況が一目でわかるようになるのでおすすめです。
個人的なおすすめ設定は下記の2つです。
- ステータスが完了になったら行全体をグレイアウトする。
- 期限が近づいたらオレンジ、期限を過ぎたら赤にする。
2.運用ルールを作る
何か管理表を作ったら運用ルールもセットで作る必要があります。私がいつも設定するルールは以下の通りです。
通知はチャットで
課題の起票、回答、再質問、クローズまでのやり取りは、チャットで行います。
課題が多い場合は、やり取りが混在して管理しづらくなるため、課題ごとに専用のスレッドを立てることをおすすめします。
ステータスの管理ルール
- 未対応:課題を起票したが、まだ対応に着手していない状態
- 対応中:課題を対応している状態。または、対応済みの課題に再質問があり、追加対応している状態
- 対応済:課題への対応が完了し、起票者の確認を待っている状態
- 完了:起票者の確認が完了し、課題をクローズした状態
回答欄の記載ルール
回答欄には、やり取りの履歴が分かるように「記載日」と「記載者」を付けて記載します。
追加の回答や質問がある場合は、既存の内容を削除・上書きせず、下に追記してください。
記載例
(09/21 山田)
本件について、〇〇の仕様で対応します。
(09/22 佐藤)
ありがとうございます。〇〇の点について、追加で確認をお願いします。
(09/23 山田)
確認しました。〇〇についても対応済みです。
2.課題を日々動かす
課題管理表を作っただけでは、課題は解決しません。
重要なのは、登録した課題を日々動かしていくことです。
担当者自身に状況を更新してもらう
課題管理表の更新は、基本的に担当者自身にやってもらいます。
PMOが全員の課題を聞き取り、代わりに更新する方法もあります。
しかし、それをやるとPMOの仕事がどんどん増えていきます。
また、担当者自身が更新しなくなることで、「自分の課題」という意識が弱くなってしまうこともあります。
PMOはすべてを自分で管理するのではなく、担当者が自分で課題を管理できる状態を作ることが重要だと思っています。
「確認中」ではなく、次の予定を書く
「回答・状況」の書き方も重要です。
例えば、
確認中
だけでは、課題が動いているのか分かりません。
それよりも、
9/8 A社に確認依頼。9/10回答予定。
と書いてあれば、次に何が起きるのかが明確です。
朝会でも、
「9/10回答予定ですね。では次回確認しましょう」
と数秒で終わらせることができます。
課題の現在地だけではなく、次に何が起きるのかを書く。
これだけでも、課題管理はかなりやりやすくなります。
ステータスはシンプルにする
ステータスも細かくしすぎないようにしています。
私の場合は、
- 未着手
- 対応中
- 対応済
- ペンディング
- 完了
程度です。
ステータスを細かく分類しても、使う人が迷ったり、入力が面倒になったりすれば意味がありません。
課題管理では、細かく管理することより、正しく継続して使えることを優先しています。
毎朝、課題を全件棚卸しする
私が課題管理で最も重要だと思っているのが、毎日の棚卸しです。
朝会などで、課題管理表を上から順番に1件ずつ確認します。
ここで重要なのは、
「全件見る」=「全件を議論する」ではない
ということです。
例えば50件の課題があったとしても、そのすべてについて5分ずつ議論するわけではありません。
「予定通りです」と確認して数秒で終わる課題もたくさんあります。
一方で、
「○○さん、これは回答をお願いします」
と一言確認するだけでよいものもあります。
そして、本当に議論が必要な課題だけ、別途時間を取ります。
全件を見ることで、課題の停滞を防ぐ
なぜ、重要課題だけではなく全件を見るのでしょうか。
それは、課題の状況が日々変わるからです。
3日前には問題なかった課題が、今日になったら関係者の回答待ちで止まっている。
そんなことは普通にあります。
重要度の高い課題や期限切れの課題だけを見ていると、こうした変化を見落としてしまいます。
だからこそ、定期的にすべての課題を見ることに意味があります。
期限が近づいたら先回りする
課題の期限が近づいてきたら、
「これは期限内に終わりそうでしょうか?」
と確認します。
ここで「ちょっと厳しいです」となったら、その時点でリスクとして扱います。
期限を変更するのか。
期限を超えた場合、プロジェクトにどんな影響があるのか。
何をすれば期限内に終わらせられるのか。
こうしたことを事前に考えることで、期限を過ぎてから慌てるのではなく、期限を迎える前に対応できます。
期限切れ・期限間近の課題を自動通知する
期限切れの課題をPMOが毎日確認して、一人ずつ催促するのは非常に大変です。
そのため、期限切れの課題についてはチャットなどで自動通知する仕組みを作ることをおすすめします。
例えば、
下記課題の期限が切れています。ご対応をお願いします。
@○○さん
No.123 XXXXについて(期限:9/8)
No.145 XXXXについて(期限:9/8)
といった通知です。
課題管理表へのリンクも付けておけば、担当者はすぐに該当課題を確認できます。
また、週初めには、
「今週、期限を迎える課題」
を通知するのも有効です。
期限切れを通知するだけでなく、期限切れになる前に知らせる。
これによって、PMOの催促業務をかなり減らすことができます。
Part 2|課題管理のポイント
1.課題管理は「棚卸し」が命
課題は生き物です。
昨日まで「対応中」だったものが、今日には「回答待ち」になっているかもしれません。
逆に、問題なく進んでいたものが突然止まることもあります。
そのため、何日も課題管理表を見ない状態になると、あっという間に状況が分からなくなります。
そして、誰も見なくなった課題管理表は、やがて単なる「ゴミ溜め」になります。
課題管理は、表を作ることではなく、定期的に棚卸しすることが重要です。
2.課題が多いことを恐れない
課題管理をしていると、
「課題が100件もある」
ということが気になるかもしれません。
でも、私は課題が多いこと自体は、それほど問題ではないと思っています。
100件あっても、100件すべてについて「今どうなっているか」が分かっているのであれば、管理できています。
逆に30件しかないのに、そのうち20件が「誰も状況を把握していない」という状態の方が危険です。
大切なのは、課題の数を減らすことではなく、管理されていない課題を減らすことです。
3.重要課題だけを見るのは危険
忙しいプロジェクトでは、
「重要度の高い課題だけ確認しよう」
となりがちです。
しかし、それでは危険です。
今は重要ではない課題が、数日後にはプロジェクトのスケジュールに影響する重要課題になっているかもしれません。
だから私は、重要課題だけではなく、課題を全体として見ることを重視しています。
4.PMOは課題を「管理する」のではなく「動かす」
PMOが課題管理表を更新し、担当者に確認し、また更新して……。
これを繰り返していると、いつの間にかPMOが課題管理担当者になってしまいます。
PMOの役割は、課題を自分で管理することではありません。
担当者に課題を動かしてもらい、必要なところでフォローし、プロジェクト全体として課題が解決するようにすることです。
PMOは課題を抱えるのではなく、課題を動かす。
これを意識すると、PMOの仕事も変わってきます。
5.「全件棚卸し」はチームの共通認識を作る
毎朝、全件の課題を見ることには、もう一つ大きな意味があります。
それは、チーム全体が、
「今、このプロジェクトにはどんな課題があるのか」
を知ることです。
個々の担当者だけが自分の課題を把握している状態では、課題同士のつながりや、プロジェクト全体への影響が見えにくくなります。
全員で課題を見ることで、プロジェクト全体の温度感を共有できます。
6.30分の朝会なら50件程度が一つの目安
課題を全件見るといっても、時間には限界があります。
私の感覚では、30分程度の朝会なら50件くらいが一つの目安です。
50件を超えてくるのであれば、数日に分けて確認する方法もあります。
例えば3日間ですべての課題を見るようにする方法です。
あるいは、朝会とは別に課題レビューの時間を設けてもよいでしょう。
大切なのは、現実的な時間の中で、すべての課題を定期的に見る仕組みを作ることです。
7.朝会前にPMOが課題を読み込んでおく
課題の棚卸しを効率よく行うためには、PMOが事前に課題を確認しておくことも重要です。
朝会の場で初めて課題の内容を読むのではなく、
「この課題は予定通り」
「これは回答が必要」
「これは期限が危ない」
ということを事前に把握しておきます。
そうすると朝会では、
「○○さん、これはどうなっていますか?」
「9/10回答予定ですね」
といった短いやり取りで進めることができます。
朝会を単なる進捗報告会にするのではなく、課題を動かすための時間にすることがポイントです。
8.他社の課題も「プロジェクトへの影響」で見る
自社が担当している課題だけを見ればよい、とは限りません。
例えば、他社が担当している作業が遅れることで、自社の作業が開始できなくなることがあります。
その場合、その課題は「他社の課題」ではありますが、プロジェクトにとっては自分たちにも関係する課題です。
PMOとして見るべきなのは、
「誰の課題なのか」ではなく、「プロジェクトにどんな影響があるのか」
だと思っています。
9.Google Sheetsは変更履歴が強い
課題管理にはExcelやGoogle Sheets、Backlog、Jiraなど、さまざまなツールを使うことができます。
その中で私がGoogle Sheetsを好んで使う理由の一つが、変更履歴です。
セル単位で、
「誰が」
「いつ」
「何を変更したのか」
を確認できます。
例えば、いつの間にか担当者が変更されていた場合でも、誰が変更したのかを追うことができます。
URLを共有するだけで誰でもアクセスでき、複数人で同時に編集してもファイル競合が起きにくいこともメリットですが、私にとっては変更履歴を追えることが特に大きなメリットです。
10.Excel・Sheetsは自由度が高い分、ルールが重要
ExcelやGoogle Sheetsは、自由に項目を追加したり、一覧で情報を確認したりできる反面、自由度が高いことがデメリットにもなります。
例えば、
「対応中」
「対応中です」
「確認中」
「確認中。」
のように、人によって書き方が違ってしまうと、課題管理表がどんどん見づらくなります。
誰が見ても同じように理解できるように、
「ステータスはこの5種類」
「回答・状況には次回予定を書く」
といったルールを決めることが重要です。
11.Backlogは通知・検索・履歴に強い
専用の課題管理ツールには、ExcelやSheetsにはない便利さがあります。
例えばBacklogなら、担当者や期限が明確に管理でき、通知も行えます。
「期限切れの課題」
「○○さんが担当している課題」
といった検索も簡単です。
また、一つの課題についてコメントのやり取りが多くなっても、そのやり取り自体が履歴として残るため、後から経緯を確認しやすいというメリットもあります。
12.一方でBacklogは一覧性に弱点がある
一方で、私がBacklogを使っていて感じたのは、一覧画面での俯瞰性です。
一覧では基本的に課題のタイトルが並び、詳細な内容や現在の状況を見るには課題を開く必要があります。
朝会で課題を上から順番に確認しながら、その場で状況を更新するという運用では、ExcelやGoogle Sheetsの方が使いやすいと感じました。
実際、私はBacklogを使っていたものの、最終的には朝会での棚卸しをやりやすくするためにExcelでの管理にかなり手を入れました。
これはBacklogが悪いという話ではなく、どのような運用をしたいのかによって、適したツールが変わるということだと思います。
13.完了確認をPMOがすべて抱え込まない
課題が「完了」になったからといって、PMOがすべての課題について独自に完了確認をする必要があるとは限りません。
基本的には担当者に責任を持って対応してもらい、PMOは全体の状況を把握します。
もちろん、完了になっているのに実際には終わっていないケースもあります。
その場合は、起票者や質問者から再度確認が入ることもあります。
PMOがすべてを細かく確認するのではなく、どこまでPMOが確認するのかをプロジェクトの状況に合わせて決めることが重要です。
14.ツール選びより運用方法が重要
Excelがいい、Google Sheetsがいい、Backlogがいい、Jiraがいい。
課題管理ツールについては、いろいろな意見があります。
でも、最も重要なのはツールそのものではありません。
どんなツールを使っても、
- 課題が登録される
- 担当者が決まる
- 期限が決まる
- 完了条件が決まる
- 状況が更新される
- 定期的に棚卸しされる
- 止まった課題が動かされる
- 最後に解決される
というサイクルが回らなければ、課題管理は機能しません。
ツールは課題管理を助けるものであって、課題管理そのものではない。
これが、実際にいろいろなツールを使ってきて感じることです。
まとめ|課題管理はプロジェクトを前に進めるためにある
ここまで、課題管理表の作り方から、毎日の棚卸し、期限管理、ツール選びまで書いてきました。
でも、結局一番伝えたいことはシンプルです。
課題管理の目的は、課題を管理表に並べることではありません。
課題を解決して、プロジェクトを前に進めることです。
そのためには、
起票する
↓
担当者・期限・完了条件を決める
↓
状況を更新する
↓
毎日棚卸しする
↓
止まっている課題を動かす
↓
解決する
というサイクルを回し続ける必要があります。
2年前の自分に伝えるなら、
「課題管理表を作っただけで満足するな。毎日みんなで見て、課題を動かせ。」
と伝えたいです。
課題が100件あることは、それほど問題ではありません。
一番怖いのは、誰も状況を把握していない課題が増えていくことです。
課題管理とは、課題を減らす仕事ではなく、プロジェクトを前に進めるための仕組みを作る仕事なのだと思います。
