クロス取引とは
ある銘柄の注文において、同一銘柄、同数量の買い注文と信用売り注文を同時に発注し、約定させる取引のこと。
株価の値下がりリスクを回避したうえで、株主優待をもらうために利用される。
株主優待の権利月最終日に向けて株価は上昇していき、翌日の権利落ち日には株価が下落することが多い。優待をもらえる日の直前に購入した場合、せっかく株主優待をもらっても株価が下落してかえって損をしてしまうケースが多い。
クロス取引では、株を購入する一方、同じ値段で信用取引の空売りをしておき、権利落ち日に現渡することで株価が下がっても損をせずに株主優待をもらうことができる。
配当金はどうなるか
優待と配当をもらえる月が同じ場合、購入した株では配当金がもらえる。一方で空売りでは、信用取引の買手に配当落調整金を支払う必要があるため相殺される。
税金の事も考えると、現物株式の場合受け取る配当金は源泉徴収の20.315%を差し引いた額になる。一方で配当落調整金では一時的に配当100%分の金額を支払う必要がある。しかしこの税金も年間で調整され、翌年の始めに取りすぎた税金の還付という形で戻ってくる。
上記はSBI証券で特定口座(源泉徴収)/配当受入の設定になっている場合となる。
SBI証券でこの設定の確認をする場合「口座管理」をクリックして「口座サマリー」のすぐ下に表示される。
逆日歩とその回避方法
信用売りでは、証券会社が株を投資家に貸すという事になるが、信用売りが多い場合証券会社の貸せる株が不足する場合がある。証券会社が貸せる株を調達するために発生するコストが逆日歩である。
貸せる株が不足すると証券会社は、証券金融会社を経由して、株を持っている機関投資家などに現物株を借りることになる。この時に支払う入札で決まる手数料が、逆日歩(品貸料)となる。信用買いをしている人も受け取ることができる。
通常、買い方が売り方に支払う金利を日歩と呼ぶが、売り方が買い方に金利を支払うことになるため逆日歩と呼ばれる。
この逆日歩を回避する方法が「一般信用取引」である。
信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」がある。
制度信用取引は、信用取引で証券会社の資金や株式が不足した場合、証券金融会社という機関から、資金や株を借りることになる。証券金融会社は機関投資家に株を借りることになるのでその際に逆日歩が発生する。
一方、一般信用取引は証券会社が独自で株を調達し投資家に貸し出すため、逆日歩は発生しない。その代わり、金利は制度信用に比べて高く、在庫にも限りがある。
発生するコスト
一般信用取引でクロス取引を行う際のコストは、現物買いの手数料、信用売りの手数料、賃借料となる。
もらう優待に対して、コストの合計が上回らないように注意する必要がある。
SBI証券でアクティブプランの場合、2020年12月現在、1日の約定金額が100万円以下の場合、現物取引と信用取引の手数料は無料となる。賃借料は年利3.9%(最低2日分)となる。